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「複雑化しつつある問題を、一般的で、システマティックで、簡潔で、再利用可能な形で解決する。」というのが当社の大目標です。

世界では何百万人ものエンジニアがIT関連で働いています。コンピュータシステムを含めた様々な物は年々複雑化して、カオスのようになってきています。 どうしてそうなってしまうのでしょうか、またどのようにすればそれを抑制できるのでしょうか?

エントロピー増大則という法則があります。ここでエントロピーというのは物事の複雑さを表しています。 エントロピーが増えるということは、物事は複雑になるということです。 この法則は19世紀の熱化学の理論に由来していますが、実は古いことわざの中で、エントロピー増大則を表しているものがいくつかあります。

「覆水盆に反らず」
こぼれた水(水の状態が複雑=エントロピーが高い)を盆の上の水(水の状態が単純=エントロピーが低い)に戻すのは困難です。 ピザを6枚に切るのは簡単だけど、6枚に切ったピザを結合して1枚に戻すのは困難であるのと同様です。

「船頭多くして船山に登る」
船頭が多い船(混沌とした状態=エントロピーが高い)を一つの方向に持っていく(エントロピーを下げる)のは困難です。 実際の傾向を見ても、強いリーダーのいる会社は成長する傾向があるように思えます。

別の例として、100ページで4千行のアルゴリズムをC++のプログラムにすると、5万になって、 それをコンパイルすると20万命令の実行ファイルが生成されます。 そして、その20万命令もあるプログラムを高速実行するにはギガヘルツで動作するコンピュータが必要になります。 これもエントロピー増大則に由来します。

いろいろなシステムがカオス状態になってしまうのは、もちろんエントロピー増大則に由来します。 エントロピーの増大により、文明の進歩にブレーキがかかるようになってきます。 それではどうすればよいのでしょうか? 一度増えてしまったエントロピーを下げるのは困難なので、エントロピーが低い状態でスタートして、途中で極力、 エントロピーを増やさないということが重要になります。

数学では、3個のスカラーの変数を使うよりも、3個の変数を束ねたベクトルを使って表記することで、 エントロピーを下げることができます。つまり、記述するためのページ数が少なくて済むということです。 ベクトルという概念は必ずしも必要ではありません。スカラだけで数式を記述することは可能です。 でも、もしベクトルが発明されなければ、数学は混沌としたものとなり、文明が現代のレベルに到達するまでに、 かなりの時間を要したことでしょう。

ベクトルと言っても、定義は多岐にわたります。 例えば、32ビットの整数と言えば、普通のコンピュータのユーザーにとってはスカラーですが、 コンピュータの素となる半導体を開発する人のミクロな視点で見れば、32ビットの整数はビットを要素とした32次元のベクトルとなります。 コンピュータの内部の処理では、32ビットのデータがベクトルとして、まとまった形で規則的に動くことで、 エントロピーの増加を抑えています。

ベクトルという概念を拡張して実在する物に適用すると、例えば1ダースの鉛筆もベクトルと言えるのではないでしょうか? 1ダースのケースに入った鉛筆の方が、バラバラな鉛筆よりもエントロピーが低くなります。

そこで、ちょっと乱暴かもしれませんが、エントロピーが低いものをベクトルと定義してはどうか? そう考えた上で、ベクトルという言葉を社名の原義で使用することにいたしました。